INTERVIEW インタビュー

松本 直美

Naomi Matsumoto

世界を追い越すために新たな舞台へ

日常のレベルを世界基準にするためのコンディショニング

2026.8.3

フットサル選手「松本 直美」選手

インタビュー・文=平野貴也 写真=加藤麻希

“今しかできない”想いが生んだ競技者への復帰

電気治療器でコンディショニング中の、フットサル選手「松本 直美」選手
現在はフットサルで活躍されていますが、学生時代はサッカー選手だったのですよね?

松本はい。6歳年上の兄がサッカーをやっていて、幼稚園の頃、母に連れられて兄の試合を観に行ったり、外でボールを蹴って遊んだりしていました。幼稚園には、体操クラブとサッカークラブがあって、体操をやっていたのですが、年中でサッカーに移りました。その後は、クラブチーム(ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18など)に入って高校卒業まで続けました。

フットサル転向は、一度競技を辞めて調理師になってからだと聞きましたが、きっかけは?

松本高校を卒業後、ホテルのシェフをやっていて、サッカー日本代表の長友佑都選手の結婚式ではテリーヌを作りました。私もサイドバックをやっていたので、長友選手は憧れの存在で、運命のようなものを感じました。フットサルをやるようになったのは、知り合いで監督をしている方から「人数が少ないから来てよ」と声をかけてもらって、遊びに行くようになったのがきっかけでした。土・日は仕事を休めず、参加する機会は少なかったけど、やっぱりボールを蹴るのは楽しいと思うようになりました。調理師免許は何歳になっても使えるけど、スポーツを本格的にできるのは今しかないと思い、両親に話したら「いいんじゃない?」と背中を押してもらえたので、フットサルに取り組むようになりました。

インタビューに答える、フットサル選手「松本 直美」選手
フットサルのどこに魅力を感じていますか?

松本コートが狭いので、攻守の切り替えが目まぐるしいところです。相手がボールを奪いに来る勢いも、元々の距離が近いので、サッカーとは違います。上手くかわせたときは、すごくうれしいです。ボールを奪えばすぐチャンスになり得るので、本当に最後の1秒までどっちが勝つか分からない試合がたくさんあります。見ている人に「最後までハラハラしたし、面白かったよ」と言ってもらえることも多いです。

サッカーは、ボールが外に出たとき、スローインでプレーを再開しますけど、フットサルはキックインで、4秒以内に再開しなければいけません。チームで戦略的に動ける機会で、私が所属しているバルドラール浦安ラス・ボニータス(※8月に海外へ移籍)では、セットプレーが100種類くらいあります。最初は覚えるのが大変でしたけど、相手の位置を見て、瞬時に判断して味方にアナウンスする素早い判断力が求められるのも面白さかなと思います。あと、アリーナ席だとコートと観客席がかなり近いです。コート内の声も全部聞こえるし、迫力が伝わりやすく、楽しんでもらえるのも良いところだと思います。

フットサルを始めたのが2018年。21年からは日本代表として活躍されています。どのような目標を持っていますか?

松本昨年(2025年)、初めて開催された女子フットサルのワールドカップに出場して、日本はベスト8でした。世界のトップとの差を痛感して悔しい思いがありましたし、特別な舞台に立てて、次の大会でもコートに立ちたい気持ちにもなれました。

今は、3年後(2029年)のワールドカップに向けて、もっとレベルアップしたいと思っています。世界を追い越す気持ちでやらないと、差は埋まっていかないので、日常のレベルを世界基準にしていきたいと考えて、今夏にスペインリーグの1部に挑戦することにしました。今、スペインの2部リーグには日本の選手が何人かいますけど、1部にはいません。強国のブラジルやポルトガルの代表選手がいる世界のトップリーグで戦えることを楽しみにしています。

初代表でのケガが変えたコンディショニングへの意識

インタビューに答える、フットサル選手「松本 直美」選手
身体作りのトレーニングやコンディション調整は、どのように工夫していますか?

松本サッカーのときは、持久力を上げていくイメージでしたが、フットサルはコートが狭く、一瞬の動きが重要なので、瞬発系の動きを上げるようにしています。コンディション調整に関しては、足首が弱いので、練習前は足首の周りを柔らかい状態にするなど、ケアをしています。競技のほかに仕事もしていて、仕事が終わってから練習に急いで向かっても、会場に着くのは練習の30分前くらい。だから、短い時間で効率的に行なうことが大事です。仕事が終わってから練習すると、帰宅時間が遅くなってしまいますけど、ストレッチは、絶対に欠かさないです。お風呂上がりで身体が緩んだときに、10分でも15分でも、頑張ってやるようにしています。

インタビューに答える、フットサル選手「松本 直美」選手
国内リーグの開催時期は6月~翌年2月ですが、コンディション調整の年間計画は?

松本オフシーズンの4月くらいから、筋力アップをかなりやります。5月になると、リーグ開幕に向けたチーム練習が増えていきます。リーグ戦が始まったら、コンスタントに試合があるので、試合の日に向けて、良いパフォーマンスが出せる状態を作っていきます。今度は鍛えるのではなく、調整していく感覚です。週末の試合後は、リカバリーに努めて、なるべく疲労が残っていない状態にして、月曜日の練習に臨みます。そこからは、チーム練習の内容や、身体の状態に合わせて、ジムに行って鍛える日もあれば、身体を休ませる日もあります。睡眠は、基本的に7時間以上確保するようにしていますし、食事では、筋量を維持するためにタンパク質の摂取量に気をつけていて、足りない分はサプリメントで調整しています。

コンディショニングやセルフケアについて考えるようになったきっかけは?

松本初めて日本代表に選ばれたときに、最初の合宿で肉離れをしてしまいました。そこから、身体との向き合い方が変わったと思います。日本代表という特別なところに行ったのにケガをして悔しかったですし、自分の身体は、自分で守らないといけないと思うようになりました。それからは、身体に左右差を感じるとか、少しでも違和感があったら、気をつける感覚が身についていきました。ケガの予防としては、ジムでの筋力トレーニングの効果もあると思いますが、ピラティスをやるようになって、普段は動かさない部分に刺激を入れたり、骨盤の位置を正常に戻したりすることで、自分の身体の状態が整っている感覚を得られるようになりました。

自分の身体を理解してこそ、治療器は活きる

電気治療器でコンディショニング中の、フットサル選手「松本 直美」選手
治療器を使い始めたのは、いつからですか?

松本フットサルを始めて2年目くらいです。足首を痛めたとき、チームメートが小型のマイクロカレント機器を貸してくれました。いつもは氷で冷やすだけで、なかなか腫れが引かなかったのに、そのときは1日で腫れが治まって、痛みもなくなってきたので、本当に効果があるなと思いました。それから、何度も借りたのですが、いつも借りるというわけにはいかず、自分で買いました。その頃から、治療院などで超音波の機器を使ってもらうこともありましたが、自宅ではマイクロカレントを使っていました。

最近は、どのように使用していますか?

松本チームには、超音波治療器とポータブルの低周波治療器があるので、ケガをしている選手で取り合っています(笑)。ケガをしていなくても、ストレッチなども含めて短い時間で筋肉を少し緩めて、柔軟性の高い状態で練習に入りたいので、使うことが多いです。私は足首の治療が多いのですが、筋疲労が太ももの前や後ろに出て、少し筋肉が張っているなと思ったときも、練習前に筋肉を緩めるために治療器を使っています。日本代表でもマイクロカレントや超音波治療器を使っています。あとは、小さな治療器は着けている状態で歩くこともできるので、飛行機などでの長距離移動のときにも使っていますね。

電気治療器でコンディショニング中の、フットサル選手「松本 直美」選手
スペインに移籍する際、治療器はどうするのですか?

松本全部、持って行きます。やっぱり、海外でケガをすると、説明がうまく伝わらないとか、時間もすごくかかって大変だと聞きます。もちろん、ケガをしないことが一番大事ですけど、どうしてもケガをしてしまうときはあるので、そのときには治療器で対応できるのは、すごくありがたいなと思います。

トレーナーさんとは、どのようなコミュニケーションを取っていますか?

松本まず、気になるところの状態について、どの部分が、どう痛いか。どのような動きをしたときに痛いのか、詳しく伝えます。その上で、どの治療器をどう使うのが良いかを教えてもらいます。何度もコミュニケーションを取っていくと、どういう動きをすると痛めてしまうのか、どう動けば痛みが出にくくなるのか、なども分かってきます。2月に右前下脛腓靭帯損傷という大きなケガをしてしまったときは、踏み込み方を変えることで痛みの出方が違ったので、身体の使い方を工夫すれば、痛みが軽減されるなと思いました。

電気治療器でコンディショニング中の、フットサル選手「松本 直美」選手
治療や予防の知識は、キャリアを重ねる中で身につけてきたものですね。若くて元気な選手ほど、ケガをするまで触れる機会が少ないものだと思います。今後、スポーツで世界のトップを目指していく選手たちには、セルフケアについて、どんなことを勧めたいですか?

松本治療器だったら、たとえば小型のマイクロカレント機器は、自宅でテレビを見ている時間や、寝ている時間にも使えます。病院に行って診てもらえるタイミングがないときでも、自分で対処ができます。小さいけど、本当にパワーはすごいと思います。

あとは、やっぱり病院や治療院に行ったときに、自分の身体の状態を理解して、どういう状態なのか伝える力は必要なので、身につけた方が良いと思います。ちゃんと伝われば、いろいろな機器を適切に使ってもらえます。また、自分の状態を把握していないと、痛くて、ケガをしやすくなっている合図が出ていても、練習や試合で頑張ってしまって、大きなケガにつながります。

先日、後輩が、内側靭帯の負傷から完全復帰した日に、逆足の靭帯を痛めてしまいました。治り切っていない足をかばって、逆足に負担がかかり過ぎました。動けるようになると、プレーしたくなる気持ちは、私もすごく分かります。でも、やっぱり、状態を把握して身体を使うことが、選手として、長い目でみたときに、すごく重要だと思います。

日本人が世界で通用することを証明したい

インタビューに答える、フットサル選手「松本 直美」選手
今後、海外リーグに挑戦して、2度目のワールドカップ挑戦を目指すわけですが、かなえたい目標、夢をあらためて教えてください。

松本ワールドカップでもそうでしたけど、日本は世界から見たら、まだまだ戦えていない、身体が小さいと思われているので、日本人でも世界のトップで戦えるんだぞと思わせたいです。スペインの1部リーグは、言葉も通じない、レベルは高い、相手も強いという中で、試合に出ること自体がすごく難しいと言われています。だから、まずは試合に出ることが一つの目標ではあります。今までに挑戦した日本の選手も出場機会を得るのに苦労していたので。

世界の舞台で、どんなプレーを見せていきたいですか?

松本私のストロングポイントは、スピードやアグレッシブなディフェンス。自分でボールを奪ったら、カウンターでゴールに向かって行くところです。もちろん、海外の選手もスピードがあるのは分かっていますけど、スピードでは負けないようにして、ドリブルやシュートを磨いて、もっと得点を取れる選手になっていきたいです。海外リーグになると、日本の方に見てもらうのは難しくなってしまいますが、YouTubeで試合配信をしているので、時差はあるけど、オンラインで見てもらえたらうれしいです。そのためにも、まずは試合に出てみんなに見てもらえるように頑張ります。

フットサル選手「松本 直美」選手
松本 直美 (まつもと・なおみ)

1997年10月22日生まれ。東京都出身。 兄の影響で5歳からサッカーを始め、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18などでプレーをする。高校卒業を機に競技を離れるが、2018年にフットサル選手として復帰。十条FCクラブレディース、さいたまSAICOLOを経て、2021年にバルドラール浦安ラス・ボニータスに入団。同年6月には日本代表に初選出され、2025年5月のAFC女子フットサルアジアカップ2025で優勝。FIFAフットサル女子ワールドカップにも出場を果たす。2026年からは、スペイン1部リーグのカハソル・グアダルカシンへ移籍。世界の舞台での活躍が期待される。