INTERVIEW インタビュー

佐藤 晃

Akira Sato

トータルケアで選手に寄り添う

最強の職人集団を支えるコンディショニング

2021.10.14

トレーナー「佐藤 晃」さん

PHOTO:戸田麻子

トップの現場で学びたいという思いが繋いだ縁

インタビューに答える、トレーナー「佐藤 晃」さん
佐藤先生はいつからトレーナー活動を始められたのですか?

佐藤2014年に日本フェンシング協会のストレングス&コンディショニング部門で、若い中学生くらいの選手を見始めたのが本格的なスタートです。それ以前は、法政大学フェンシング部部長でいらした伊藤マモル先生と了徳寺大学在学時の恩師である上岡尚代先生の指導の下、法政大学フェンシング部で学生トレーナーとして活動していました。早稲田大学の大学院時代は、大学の中にあるスポーツ医科学クリニックでティーチング・アシスタントを務めていました。

インタビューに答える、トレーナー「佐藤 晃」さん
学生時代からフェンシングに携わられていたのですね。

佐藤学生トレーナーとして活動するに当たって何カ所か選択することができたのですが、その中でトップレベルの選手達をみることができたのがフェンシングだったんです。トップの現場で学びたいという思いからスタートしたのですが、それが現在にまで繋がっていることは本当にありがたいことだと思っています。

2019年からはフェンシング日本代表男子エペの専属トレーナーとしてチームに帯同されていますが、年間どのくらいトレーナー活動をされているのですか?

佐藤もうほぼ全ての時間をフェンシングのサポートに費やしてきたという感じです。世界中で年間10回近く試合を行うのですが、それに合わせて合宿や調整なども行います。日本代表のゴルバチュク統括コーチがウクライナの方なので、合宿もウクライナで行うことが多いです。日本人選手がウクライナスタイルで強くなってきていることもあって、ウクライナの選手達と剣を交えることに意義を感じているようです。選手同士もとても仲が良いですよ。

多くの時間を選手と共に過ごされているのですね。

佐藤ほとんど家族のような関係ですね。ずっと一緒にいるので、精神的に整ってない選手も分かりますし。専属トレーナーとしてひとりで請け負っていると、どうしても何でも屋というか、総合窓口のような役割を求められることになるんです。何でもできるわけではないですけれど、そうした選手の話を聞いたり、悩みに対してアドバイスをしたりと、身体のケア以外の部分も含めてトータルで選手と向き合うようにしています。

自身の経験から物理療法機器を導入

インタビューに答える、トレーナー「佐藤 晃」さん
治療には物理療法機器を活用されていますが、いつ頃から使われているのですか?

佐藤物理療法と出会ったのは、仙台市の実家で父が営む佐藤接骨院です。平成元年に開院し、現在も仙台市内で地域の方やスポーツ選手が足を運んでくださっているのですが、開院当初から物理療法機器を導入していたと記憶しています。

私自身、野球をやっていたので肘や肩を痛めることも多かったのですが、その際に超音波治療やハイボルテージ治療を受けていたことを覚えています。そのときの経験から、治療器を使うとすぐに治るというイメージがあったので、2016年にオークス鍼灸整骨院を開院した際にも物理療法機器を導入することにしました。

子どもの頃から物理療法機器で治療を受けていたのですね。治療家の道に進まれたのもお父さんの影響ですか?

佐藤父の影響は大きかったですね。実家の整骨院にいらっしゃる選手や地域の方が、みんな笑顔で帰っていくんです。それを見て、すごく良い仕事だなと憧れて。子どもにとってはキラキラした世界でしたから、小学校4年生の頃にはもうこの道に進もうと決めていました。

インタビューに答える、トレーナー「佐藤 晃」さん
では子どもの頃の夢が叶ったのですね。

佐藤いや、まだまだ道半ばです。トップアスリートはその道を究めた職人たちの集団であると思っています。そうした選手たちの治療を行うためには、当然のことながら私たち治療家も職人でなければいけません。ですので、職人に見合った職人であろうと常に意識しています。

特にフェンシングという競技は電気審判機を使用しますので、使用する道具(剣)についても常日頃から繊細な整備を心がけていていることを感じます。こうした点からも選手それぞれに職人の姿というか、職人らしさみたいなものを感じることは多いです。

その分私も指先の感覚や、治療を行う際に自身の心を整えた状態で向き合う努力をしています。しかし、まだまだ私は職人としては半人前にも満たないですし、特別に優れた治療家であるとも思っていません。いまだ修業中の身ですので、これからは業界を問わずに職人の魂と技術に触れて、職人になるための心を磨いていきたいと思っています。

ハイボルテージグローブセラピーで急性症状に対応

インタビューに答える、トレーナー「佐藤 晃」さん
アスリート治療の専門家からみた物理療法のメリットとは何でしょうか?

佐藤やはり人の手では届かない範囲まで治療できるところが最大のメリットです。あとは手技だけの場合に比べて、治療時間を短縮できるところもメリットとして感じています。

現在は多くの物理療法機器がありますので、治療家にとっては必要なウェポンを数多く持つことができる環境だと思っています。人の手自体に進化はないですが、物理療法機器は5年もすれば今までになかったようなものがリリースされ、どんどん進化していく時代になっています。その治療範囲の広さと進化の速さに対応する必要が私たちにはあると思います。

治療の際、手技と物理療法のどちらを先に行いますか?

佐藤私は物理療法を先に行うことが多いです。ただ「とりあえず物理療法をやっておこう」という安易な選択をすることはなく、疼痛緩和を図りたいとか、筋緊張を緩和させたいといった明確な治療目的がある中で、その目的に適した物理療法である程度先に整えておき、最後に手で調整するという感じです。

超音波であれ、電気刺激であれ、どうしてもプローブや導子を介して治療を行うことになるので、それが物理療法のデメリットであり私にとってはリスクでもあると感じています。ですから、最後は必ず自分の手を使って仕上げるようにしています。

インタビューに答える、トレーナー「佐藤 晃」さん
フェンシング選手のケアでは、どのように物理療法を活用されていますか?

佐藤フェンシングは左右非対称に構えて前後に進みながら攻防を行うため、身体に偏った負担がかかります。その影響で偏った痛みや不調を訴える選手が非常に多いというのが特徴です。痛みが慢性化している選手も多いので、手技だけでなく物理療法と組み合わせながら選手のサポートを行っています。

特に多く使用しているのがハイボルテージ療法です。導子から直線的に電気刺激を行うことができる特性を活かして、手では届かない範囲の治療に使用しています。導線の編み込まれた手袋型の導子を使うことで、手に近い感覚での治療も行えるので、疲労のたまりやすい腕や身体のねじれで痛みを覚えやすい腰などには、このグローブ導子を用いてコンディショニングを行っています。

急性症状に対応できるというのも物理療法の強みですね。この夏の大会でも試合中に腰を痛めてしまった選手がいたんです。痛み止めの注射を打つかどうかという状態だったのですが、とにかく筋緊張を緩めながら疼痛緩和を図ろうとグローブ導子を使って調整を行いました。正直、個人戦の時は私自身も不安があったのですが、団体戦は全く痛みがない状態で迎えることができてほっとしました。

大切なのは正しく選択し、正しく伝えること

選手に物理療法を行う際に気をつけていることはありますか?

佐藤当たり前ですが、今起こっている症状に対して、最も治療効果の高い物理療法機器を選択することです。そのためには、これも当然ですが、治療器の効果についてきちんとした説明ができないといけません。ですので、日頃から選手に対して正しく情報を伝えるための訓練をしています。チームには私だけでなく、リハビリやトレーニングを担当しているスタッフもいますので、まず選手自身がしっかりと理解した上で治療を受けてもらいたいですからね。

インタビューに答える、トレーナー「佐藤 晃」さん
具体的にはどのように物理療法を使い分けているのでしょうか?

佐藤筋肉に温熱を加えたいときは超音波を選択します。電気刺激に関しては疼痛緩和がメインです。手では届かない範囲の筋肉を収縮させたいときに、電気刺激の手を借りて筋肉を掘り起こすようなイメージで使っています。

物理療法によるケアを行うタイミングについて教えてください。

佐藤通常は試合の3〜5日前くらいまでです。前日や当日に使うことはありませんね。捻挫とか、明らかな急性外傷の場合は、直前でも物理療法で疼痛緩和を図ることはありますが、基本的には時間をかけて少しずつ調整しながら良いコンディションに持っていくことを心がけています。

自分の経験を還元していきたい

インタビューに答える、トレーナー「佐藤 晃」さん
トレーナー活動をされる上で苦労されている点は何でしょうか?

佐藤荷物の多さですね(笑)。本当に海外遠征が多い種目なので、できるだけ荷物を少なくしたいのですが、テーピングやタオル、アイシング用のビニール袋といった細々としたものからポータブルベッドや治療器まで入れると、全部で60キロにもなります。すべてを持って行くことができないケースもあるので、治療器はさらに小型軽量化してもらえると嬉しいです(笑)。

ご期待に添えるよう努力いたします(笑)。では最後に今後の目標についてお聞かせください。

佐藤ありがたいことにフェンシング競技のサポートを通じて多くの経験をさせていただきましたし、今回の選手達の活躍によって最高の時間を共有させてもらいました。そして、最強の職人集団のサポートをさせていただくことで、自分自身もとても成長することができたと感じています。選手とフェンシング協会関係者の皆さまには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

これからはフェンシングに限らず、多くのスポーツ選手に寄り添うことができる幅広い活動もしていきたいと思っています。また、スポーツの現場に携わることを強く希望されている情熱ある若い先生方に、私が経験してきたことをできる限り還元できるよう、教育という部分にも力を入れていきたいと考えています。

トレーナー「佐藤 晃」さん
佐藤 晃 (さとう・あきら)

オークス鍼灸整骨院 院⻑。
了徳寺大学 整復医療トレーナー学科卒業後、早稲田大学大学院 スポーツ科学健康科修了(専門:野球・発育発達)。柔道整復師として埼玉県内の整骨院勤務を経て、2015年にオークスベストフィットネスへ入社。2016年にオークス鍼灸整骨院を開院。2021年より佐藤接骨院グループ 専務兼店舗統括マネージャー。

経歴: 法政大学フェンシング部 学生トレーナー(2009〜)/ 早稲田大学スポーツ医科学クリニック ティーチング・アシスタント(2012)/ 日本フェンシング協会 ストレングス&コンディショニング部門(2014)/ JOC強化スタッフ(フェンシング:医科学スタッフ) (2016〜)/成田高校野球部メディカルチーフトレーナー(2016〜)/ 第30回ユニバーシアード夏季競技大会帯同トレーナー(2019)/フェンシング日本代表男子エペ 専属トレーナー(2019〜)