INTERVIEW インタビュー

シーホース
三河 /

柏木 真介

SEAHORSES MIKAWA / Shinsuke Kashiwagi

自分自身ではなく、若手選手たちのために

キャプテンとして見せる“やり切る”姿勢

2023.08.25

プロバスケットボール選手「シーホース三河/柏木 真介」選手

インタビュー・文=三河賢文 写真=島崎信一

バスケットボールを始めた原点は「面白さ」

インタビューに答える、プロバスケットボール選手「シーホース三河/柏木 真介」選手
バスケットボールを始めた、そして競技としてのめり込んでいったきっかけを教えてください。

柏木バスケットボールを始めたのは、小学校3年生の頃でした。いとこの通っていた練習に、遊びがてら行っていたのがきっかけです。当初は野球やサッカーなどをやっていたのですが、ちょうどその頃にそれまで4年生にならないと入れなかったミニバスケットボール少年団に3年から入れるようになったため始めることにしました。

始めた頃は、みんなでワイワイしているようなイメージでしたね。面白そう、楽しそうというのが第一印象。でも、実際に入ってみると練習は厳しかったです。当時は意識していなかったのですが、小学生にしてはとても厳しい練習だったと思います。でも、厳しさより楽しさの方が上回っていたので、気にせず通っていました。

本当にバスケットボールが面白いと感じたのは、初めて出場した試合でのことです。もともと負けず嫌いだったので、「試合に出たい」「メンバーに入りたい」「負けたくない」という気持ちは常にありました。最初は上を目指すというより楽しんでやっていたのですが、選抜に選ばれたり強い高校に行ったり、年代別の代表になったりするたび、欲が出てきて上を目指すようになったんです。

インタビューに答える、プロバスケットボール選手「シーホース三河/柏木 真介」選手
小学校3年生から現在までプレーしてきて、「やめたい」と思ったことはなかったんですか?

柏木何回も競技をやめようと思いましたよ。私は北海道出身なのですが、北海道は広いから選手も多いんですね。北海道選抜では多くの選手が集まった中から、12人しか選ばれないというセレクションがありました。そのとき、最後に落ちてしまって、挫折のような感じを味わったことは今でも覚えています。幸いにも先生や仲間など周りの環境に助けられ、もう一回チャンスがあって受かったのですが。それまでは地区で選抜に選ばれていたし、キャプテンを務めるなど順調だったのでショックでしたね。

また、高校は強豪校に進学できましたが、エリートと呼ばれる選手がたくさんいて、私自身は道内で凄い選手というわけではありませんでした。ですから高校時代はとりあえず競技をやり切って、卒業できたら良いと思っていたくらいです。1年生でメンバーに入れたものの、正直に言うと厳しくて何度も「帰りたい」と思ったことがあります。

意識的な準備とケアが欠かせない

インタビューに答える、プロバスケットボール選手「シーホース三河/柏木 真介」選手

©SeaHorses MIKAWA Co.,Ltd.

それでも競技を続けたからこそ、プロとして活躍するまでに至ったのですね。今現在は、どのようなスケジュールで試合や練習をこなしているのでしょうか?

柏木シーズンは10月に開幕し、ゴールデンウィーク明けまで続きます。チャンピオンシップに残れば、5月いっぱいまで試合が組まれるイメージです。その後、6~7月はオフ。7月後半から自主練習が始まり、8月から全体練習に入っていきます。

オフの日は、よくゴルフに行きますね。昔から先輩に誘われてやっていたのですが、最近すっかりはまってしまいました。周りにもゴルフをやる人が増えているんですよ。身体も動かすし、体幹も使うから、意外と良いトレーニングになります。あちこち移動しながら常に走っているので、体力も使います。代表だった頃はシーズンが終わると、1週間後には合宿に呼ばれて缶詰状態でした。今はオフの時間も充実していますね。

日々の練習は1.5~2時間、フィジカルトレーニングを含めて3時間程度です。やり過ぎず、その中で質の高い練習に取り組んでいます。ただ、私は年齢が42歳になり、選手としてはかなりのベテランになりました。若いときと今では、準備やケア、練習への持って行き方がだいぶ違ってきています。ですから、しっかり練習をこなすのはもちろんですが、準備とケアの時間に関しては十分確保するようにしています。

インタビューに答える、プロバスケットボール選手「シーホース三河/柏木 真介」選手
具体的に、コンディション管理の面で意識・実践されていることを教えてください。

柏木食事と睡眠には気を配っていますね。栄養バランスは常に意識していますが、シーズン中に大切なのが炭水化物の摂り方です。試合前になると、炭水化物とタンパク質は結構な量を食べます。その代わり、試合が終わったら翌日は余り食べないということもありますね。

睡眠については、10時間以上は寝ています。就寝時間は21時頃ですが、子どもを寝かせに行って一緒に寝てしまうことも(笑)。シーズン中は妻が気を遣ってくれるので、睡眠や栄養については上手く調整できています。

自分に合ったコンディショニング法を見つけてほしい

電気治療器でコンディショニング中の、プロバスケットボール選手「シーホース三河/柏木 真介」選手

©SeaHorses MIKAWA Co.,Ltd.

コンディショニングについて重要だと感じられていることや、若手選手に気を付けて欲しいことはありますか?

柏木若いときは身体も動いたし、プレーを含めて何をやっても自分が思い描いているようなパフォーマンスができました。ですから、あまりコンディショニングは気にしていなかったですね。毎日のように、たくさん練習しても大丈夫でしたから。

でも、年齢を重ねると疲労が抜けなくなります。ベストな状態でプレーすることが大切ですから、そこに向けたトレーニングやケア、準備をより重要視するようになりました。現在取り組んでいることを若いうちから行っていれば、もっと良かったかもしれないですね。

でも、若いうちからコンディショニングのことを細かく考えていると、逆に気疲れしてしまうかもしれません。私自身いろいろと試しながら自分に合ったものを見つけ、それを実践するというサイクルを繰り返してきました。

よく若手選手からは食事やケア、サプリメントのタイミングなど聞かれます。トレーナーはいるものの、どんな体幹トレーニングが良いのか質問されることもありますし、私を見て真似する選手もいます。でも、自分がやっているからといって、他の選手にも「やった方がいいよ」とは言えません。もしかしたら、その選手には合わないかもしれないですから。真似するのは悪いことではありませんが、その中で自分なりに考え、選手それぞれ自分自身に合った方法を見つけてもらいたいですね。

治療器はケガなく練習をこなすための手段

インタビューに答える、プロバスケットボール選手「シーホース三河/柏木 真介」選手
初めて治療器を使用したときのことを教えてください。

柏木ケガをしてしまった際、通っている治療院やトレーナーに初めて治療器を使ってもらいました。私は20代前半の若い頃から代表選手だったので、その中では治療器を使ってケアしてもらうのが日常でしたね。超音波治療がメインですが、個人的にも小型の治療器を購入して使っているんです。低周波やマイクロカレントなどいろんな種類がありますが、身体の状態やケガの具合によって使い分けています。

30代の頃、半月板をケガしたことがありました。このケガは自分の中で少し危うさを感じ、それからいろいろと身体や治療のことを勉強したんです。これからの自分にとって、何が必要なのか。これをきっかけに、ケアの方法はだいぶ変わったと思います。

ご自身でも治療器をお持ちなのですね。具体的に、治療器をどのように活用されているのでしょうか?

柏木基本的に、治療器は毎日のように使っています。練習やトレーニング前、試合の日なら朝起きてすぐ。また、試合後のクールダウンにも使用しますね。膝などの関節に痛みが出やすいのですが、関節そのものが悪いというより、筋肉に負担が掛かることで張りが出てしまうんです。ですから練習や試合の前は、しっかり膝を治療器で温めてから臨むようにしています。

基本はトレーナーにやってもらうのですが、練習前に超音波で膝を温める際は自分でセッティングします。同じ膝でも、張っている部位で当て方が違うんですよね。だから、ちゃんとトレーナーにチェックしてもらうようにしています。以前は、ケガしてから治療を受けるというのが通常でした。しかし、ここ数年は準備段階から治療器を使うようになっています。

ケアについては、インターネットで調べることも多いですね。他のアスリートもいろんなケアを行っているので、何しているのかって気になるじゃないですか。参考になりますし、良い情報を拾って、自分にできる範囲で実践するようにしています。

インタビューに答える、プロバスケットボール選手「シーホース三河/柏木 真介」選手
ご自身でも、ケアについて調べながら取り組まれているのですね。いつ頃から、ケアを強く意識するようになったのでしょうか?

柏木膝の疲労が溜まったときに痛みが出るのですが、練習前に治療器を使うことでスムーズに練習に入れます。以前は温まらないまま練習すると、膝が痛んでしまうことが少なくありませんでした。だから、練習前のケアは特に意識していますね。

私は一度移籍して、シーホース三河を離れました。戻ってきた頃には40歳手前。すると、練習量がまったく違ったんですね。4~5年前ですが、その辺りからケアを徹底するようになりました。

チームには若手の選手が多いのですが、私もその中で一緒にプレーしなければいけません。練習量を調整して良いとは言われますが、やるなら同じメニューをこなさないと、みんなに対しても良くないと思うんです。練習は厳しいし、ものすごい負担が掛かります。その日の練習を上手く乗り切っても、疲労感や関節の痛みなども、練習量に比例するようにして翌朝に残ってしまいます。

チームに在籍している以上、やるべきことはしっかりやる。そのために、人一倍、準備やケアに時間を掛けています。これができなくなったときが、引退を考えるタイミングなのかもしれないですね。

チームとして勝つために根気強く取り組み続ける

インタビューに答える、プロバスケットボール選手「シーホース三河/柏木 真介」選手
しっかり練習をこなす、キャプテンとしてのその姿は、きっと他の選手たちにとっても刺激になっていることと思います。これからの未来を考えたとき、どんな目標を持って日々のトレーニングに取り組まれているのですか?

柏木例えばタイトルを取ったり代表に選ばれたりという、個人としての目標はあまりありません。今は、チームとして勝ちたいという思いだけですね。自分自身ではなく、若手選手の手助けをしたいという気持ちを強く持っています。

もちろん選手ですから、試合に出る以上はしっかりしたパフォーマンスを維持しなければいけません。でも、あくまでチームのためというのが、今のプレーの根幹にあります。何かを言葉で伝えることや、やめてしまうことは簡単です。でも、何かアドバイスするには、自分がやっていないと説得力に欠けるじゃないですか。

そのために必要なことと言えば、新しいことは何もありません。今までやってきたことを、これからも継続していくことが一番だと思っています。普通のことを普通にやるのって、実はとても難しいんですよね。そして、それを継続するなら根気強くやらなければいけません。自分自身にとってはもちろん、その姿勢は、それを見た周囲の選手たちにもプラスの影響を与えられることがあると思っています。

プロバスケットボール選手「シーホース三河/柏木 真介」選手
柏木 真介 (かしわぎ・しんすけ)

1981年12月22日生まれ。北海道出身。
小学校3年よりバスケットボールを始める。学生時代より全国で活躍を続け、大学卒業後に日立サンロッカーズへ入団。新人王とスティール賞を獲得し、1年目にしてオールスターに出場。日本代表にも選ばれる。
2006年にアイシンシーホース(現:シーホース三河)へ移籍。プロ契約を結ぶ。
2006年FIBA世界選手権代表。2007〜2010、2012、2013年オールジャパン ベスト5。
2020年、3シーズンぶりにシーホース三河へ復帰。2022-23シーズンにはキャプテンを務める。